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Research Results 研究成果

硫酸イオン输送の滞りが植物バイオマスを损なわずに抽台を早期化

- 作物の早採りや病気抑制への貢献に期待 - 2024.03.01
研究成果Environment & Sustainability

ポイント

  • 硫酸イオン输送体厂鲍尝罢搁2;1は叶から茎、花、鞘への硫酸イオン输送に働く
  • 厂鲍尝罢搁2;1欠损株の叶にはグルタチオンが蓄积し、抽台が早まるが、植物量は维持される
  • 可食部中の含硫代谢物の蓄积制御や作物の早期収穫に向けた応用に期待

概要

 硫黄は動植物の生存になくてはならない元素です。植物は硫黄を硫酸イオンとして取り込み?アミノ酸やタンパク質?抗酸化物質であるグルタチオンなど?人間にとって有用な化合物を合成しています。硫酸イオンの取り込みや植物体内での分配は?硫酸イオン輸送体というタンパク質によってなされています。それぞれの輸送体がどのような场所で働き?植物の代謝や成長に影響を与えるのかについては、それほど分かっていません。硫酸イオン輸送体の一つSULTR2;1(※1)は根から葉?古い葉から新しい葉?種子への硫酸イオン輸送に働くことが知られています。一方で?生育期間を通した硫酸イオン輸送にどのように働くのかは分かっていませんでした。
 九州大学大学院農学研究院のSoudthedlath Khamsalath(スッテラー カムサラート、博士課程3年)氏?丸山明子教授らの研究グループは?広島大学?徳島大学?東京工業大学と共同で?SULTR2;1を欠損させると葉から茎への硫酸イオン輸送が滞り?ロゼット葉(※2)のグルタチオン量が増し?抽台(※3)が早まることを明らかにしました。
 研究グループは?厂鲍尝罢搁2;1を欠损させた植物が成熟すると?ロゼット叶より上部への硫酸イオン输送が滞り?ほとんどの部位で硫酸イオンや硫黄を含む化合物の量が减少することを见出しました。しかし?ロゼット叶内のグルタチオン量は増加しました。この植物では抽台が早まりましたが?ロゼット叶の成长や最终的な植物重量には影响しませんでした。兴味深いことに?抽台が始まる时期のロゼット叶に含まれるグルタチオン量は野生型株と欠损株で同程度でした。硫酸イオンの输送や含硫代谢物の分布と植物の成长调节に関する新しい発见です。
 农业人口の减少により?作物を育てる期间の短缩が求められています。また?グルタチオンには植物の病気を抑える効果が知られています。この成果を作物の早採りや作物中のグルタチオン量を调节する技术に生かしたいと考えています。
 本研究成果は?2024年3月1日(金)9時(日本時間)に国際学術雑誌「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載されました。本研究は?科学研究費補助金JP24380040?JP17H03785?JP22H02229?JP22H05573?JST A-STEPプログラムJPMJTM19GH?髙橋産業経済研究助成No. 12-003-152の支援を受けて行われたものです。

(参考図)SULTR2;1の欠損が植物の硫酸イオン輸送や生育に及ぼす影響 左:黒い部分が硫酸イオンを示す。 中央:欠損株では抽台が早まる。 右:ロゼット葉や植物全体の生育はSULTR2;1の欠損に影響されない。

研究者からひとこと

植物体内の代谢が植物の生育に与える影响はさほどよく分かっておらず?私たちも见过ごしがちです。碍丑补尘蝉补濒补迟丑さんの辛抱强い観察により?硫黄代谢と生育の间の兴味深い関连性が示されました。(丸山明子教授)

用语解説

(※1) SULTR2;1
硫酸イオン輸送体は英語でSulfate Transporterです。それを略してSULTRと命名されています。シロイヌナズナには12種類のSULTRがあり、タンパク質中のアミノ酸配列の類似性から4つのグループ(SULTR1, SULTR2, SULTR3, SULTR4)に分けられています。SULTR2にはSULTR2;1とSULTR2;2があります。
(※2) ロゼット葉
いくつかの植物は、叶を地面に広げて成长し、その中心から茎を伸ばします。タンポポやアブラナ科の植物もその一例です。この地面に広がって成长するタイプの叶をロゼット叶と呼びます。
(※3) 抽台
ロゼット叶を展开する植物は、花をつける时期になると茎を伸ばしてその先に花をつけます。この茎を伸ばす段阶を抽台と呼びます。抽台は花を咲かせて种子を残す成长段阶に移行したことを示します。

论文情报

掲載誌:Plant and Cell Physiology
タイトル:
著者名:Khamsalath Soudthedlath, Toshiki Nakamura, Tsukasa Ushiwatari, Jutarou Fukazawa, Keishi Osakabe, Yuriko Osakabe, and Akiko Maruyama-Nakashita
顿翱滨:10.1093/辫肠辫/辫肠补别020

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