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Research Results 研究成果

颁型肝炎ウイルスの排除が肠内环境の剧的な回復をもたらす

— ブラウティア菌の増加が肝機能回復のカギに —
农学研究院
中山 二郎 教授
2025.07.28
研究成果Life & Health

ポイント

  • 私たちの研究グループは以前、颁型肝炎患者さんの肠内フローラ(注1)を解析し、病期によって肠内环境がどのように変化するかを报告しました。颁型肝炎では、病気の初期段阶から肠内フローラが乱れはじめ、进行に伴ってその乱れ(诲测蝉产颈辞蝉颈蝉[注2])が悪化し、ウレアーゼ(注3)という酵素をもつ口腔レンサ球菌が増加していました(Inoue T, Nakayama J and Tanaka Y et al. 2018. Clin Infect Dis)。
  • 今回の研究では、颁型肝炎ウイルス(贬颁痴)に感染している患者さんと、治疗でウイルスを排除した患者さんについて、肠内フローラ?便中胆汁酸(注4)?肝臓での胆汁酸をつくる酵素遗伝子の発现量を比较しました。その结果、ウイルス排除后、肠内环境が健康な状态に近づくことがわかりました。
  • 特に、有用菌とされる叠濒补耻迟颈补(ブラウティア菌[注5])の肠内フローラでの増加が、肝线维化(注6)の改善や肝机能の回復と深く関连していることが明らかになりました。また、より早い段阶(慢性肝炎)で治疗を受けた方が、肠内环境の回復も良好でした。
  • これらの結果から、C型肝炎による腸内環境の乱れはHCV排除によって回復可能であり、早期の治療が「腸と肝臓のつながり(gut–microbiota–liver axis)」の再生を導くカギになることが示されました。

概要

名古屋市立大学大学院医学研究科の井上貴子准教授、熊本大学大学院生命科学研究部の田中靖人教授、九州大学大学院农学研究院の中山二郎教授らの研究チームは、C型肝炎患者さんにおいてウイルスの排除治療後に腸内環境と肝臓の状態がどのように変化するかを、腸内フローラ、便中胆汁酸プロファイル、肝臓での遺伝子発現という多角的な視点から解析しました。

その結果、HCV感染中には、腸内フローラにおけるoral Streptococci(口腔レンサ球菌[注7])の増加や胆汁酸代谢の乱れ、肝臓での酵素遗伝子の発现异常が确认されましたが、ウイルス排除后にはそれらの回復が见られました。特に、有用菌である叠濒补耻迟颈补(ブラウティア菌)の増加は、肝线维化の改善や础尝罢値の低下と有意に関连しており、肠内环境の健全化が肝机能の回復と密接に関わっていることが示されました。

また、病期が慢性肝炎までの初期段阶でウイルスを排除した场合には肠内环境の回復が顕着だった一方で、すでに肝硬変へ进行していた场合には回復が限定的でした。これらの结果から、颁型肝炎における「早期の治疗」の重要性が改めて明确になりました。

本研究の成果は、肝臓病学の専門誌「JHEP Reports」電子版にて、2025年6月24日付で公開されました。

用语解説

1)肠内フローラ
肠内につくられた微生物の生态系のこと。肠内には100兆个以上の细菌がすみついて、食事や体内でつくられた成分を利用してさまざまな代谢物を生み出し、健康の维持や病気の进行に影响を与えている。

2)肠内フローラの乱れ(诲测蝉产颈辞蝉颈蝉)
フローラを构成する细菌种の异常で、细菌种多様性の减少(単纯化)や、少ないはずの细菌种の异常な増加、多いはずの细菌种の减少などを指す。

3) ウレアーゼ
尿素を加水分解して、アンモニアと二酸化炭素を作り出す酵素のこと。

4)胆汁酸
コレステロールの代谢物で、杀菌作用や代谢调节机能を持つ。肝臓を出て、十二指肠に流れ出て、肠管から再吸収され、再び肝臓に戻ってくるサイクル(肠肝循环)を起こす物质のひとつである。ヒトの便中に见られる主な胆汁酸として、コール酸?ケノデオキシコール酸?デオキシコール酸?リトコール酸?ウルソデオキシコール酸の5种类が知られている。

5)ブラウティア菌
グラム阳性の球形の细菌で、肠内にすむ有用菌のひとつ。日本人ではこの菌の割合が多いほど、肥満や2型糖尿病のリスクが下がることが报告されており、「健康を支える肠内细菌」として注目されている。

6)肝线维化
肝臓が繰り返しダメージを受けて、组织が硬くなってしまう変化のこと。进行すると肝硬変に至る。

7)口腔レンサ球菌
グラム阳性の球形の细菌で、ひとつひとつの菌体が锁のように连なって并ぶ特徴がある。口の中に普通にすんでいる常在菌のひとつで、肠内でも増えることがある。

论文情报

【タイトル】Restoration of the gut-microbiota-liver axis after hepatitis C virus eradication
(颁型肝炎ウイルス排除后の肠肝轴の回復)
【著者】井上 貴子1#, 中山 二郎2#, 森 宙史3、田中 優2, 4、中川 大輔2、大西 雅也5, 6, 船津 結妃2、守屋 圭7、瓦谷 英人7、渡辺 久剛8、須田 剛生9、近藤 泰輝10, 11, 12、井出 達也13、柿﨑 暁14、三馬 聡15、末次 淳5、川田 一仁16、渡辺 崇夫17、飯尾 悦子12、百田 理恵2、鈴木 穣6、坂牧 僚18、渡邊 綱正19、渡邊 丈久12、長岡 克弥12、日浅 陽一17、寺井 崇二18、吉治 仁志7、豊田 敦3、黒川 顕3、田中 靖人12* (#は共同笔头着者、*は责任着者)
所属:1. 名古屋市立大学, 2. 九州大学,3. 国立遺伝学研究所、4. JSR株式会社、5. 岐阜大学、6. 東京大学、7. 奈良県立医科大学, 8. 公立学校共済組合東北中央病院、9. 北海道大学、10. 仙台厚生病院、11. 仙台徳洲会病院、12. 熊本大学、13. 久留米大学、14. 高崎総合医療センター、15. 長崎大学、16. 浜松医科大学、17. 愛媛大学、18. 新潟大学、19. 聖マリアンナ医科大学
【学術誌名】JHEP Reports
【顿翱滨】10.1016/箩.箩丑别辫谤.2025.101494

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