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Research Results 研究成果

世界初、「光合成の場」を集めて植物の生長を促進 ~植物の生産性向上技術の新たなツールとして期待~

2018.10.29
研究成果Life & Health

 九州大学大学院農学研究院 後藤 栄治 助教らの研究グループは、京都大学 末次 憲之 博士、首都大学東京 和田 正三 客員教授の研究グループらとの共同研究により、光合成の場である葉緑体を細胞の上面に集めることによって植物の生産性を大きく向上させることに、世界で初めて成功しました。
植物は、光をエネルギー源とする一连の光合成反応によって生长に必要なエネルギーを自ら产出するため、光合成活性の上昇は、植物の生产性向上につながります。そこで现在、遗伝子组み换え等のバイオテクノロジー技术を駆使して、光合成の诸反応を改変する试みが世界中で盛んに行われています。一方、本研究グループらは、光合成の诸反応ではなく、光合成の场である叶緑体の细胞内の配置に注目しました。
 叶緑体は、强过ぎる光の下では、光を避けて细胞の脇へと移动するのに対して、弱い光の下では、细胞の上面に集まります(叶緑体集合反応)。叶緑体集合反応の现象自体は1世纪以上前に発见されていましたが、その重要性は现在に至るまで実証されていませんでした。本研究グループらは、様々な変异体を利用して、表面に配置する叶緑体の割合をコントロールすることにより、叶緑体が细胞表面に集合する割合に比例して、叶全体での光の吸収量が増大し、多くの光を光合成に利用できることを明らかにしました。さらに、常に多くの叶緑体を细胞上面に集合させた変异株は、通常の植物に比べて同じ光条件下でも植物体が1.5倍以上も大きくなることを発见しました(参考図1)。
 叶緑体の细胞内での配置変化は、藻类から种子植物にいたる様々な植物种が有する普遍的な现象であり、光の质と量によって制御できるため、本知见を利用することで、様々な植物种の生长速度を自在に制御できると考えられます。
 本研究は、日本学術振興会 科学研究費15K18713、18K14491、25251033の支援を受けました。本研究の成果は、米国科学誌『Plant Physiology』誌にすでにオンライン掲載されており、11月中に掲載される予定です。

(参考図1)
同じ光环境で45日间生育させた、通常の植物(左侧)と常に多くの叶緑体を细胞の上面に集めた植物(右侧)の生育写真。

研究者からひとこと

少数で顽张ってきた成果を公表できて大変嬉しく思います。一绪に研究してきた学生さん、共同研究者の皆様、设备等の研究环境を快く提供してくれた皆様、研究活动を支えてくれた家族に感谢申し上げます。

论文情报

,Plant Physiology,
https://doi.org/10.1104/pp.18.00484

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