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Research Results 研究成果

大気中で動作するスピントロニクス材料の開発 ?グラフェンで保護されたスズ単原子膜?

2019.03.20
研究成果Materials

発表のポイント
◆グラフェンでカバーしたスズ単原子膜が真空中?大気中の両方でスピン偏极した电子の伝导を担うことがわかった。
◆本スズ単原子膜には、膜面内方向に寝たスピンをもつ电子と膜面垂直方向に起立したスピンをもつ电子の両方が存在していることを発见した。
◆グラフェンを保护膜として用いることで、従来真空中のみに制限されていたスピントロニクス材料が大気中でも使用できる可能性を示した。

东京大学物性研究所の矢治光一郎助教、小森文夫教授らは、九州大学大学院工学研究院のビシコフスキーアントン助教、田中悟教授らと共同で、グラフェン(注1)でカバーしたスズ(厂苍)単原子膜がスピン偏极(注2)した电子の伝导を担うことを発见しました。さらに本物质は大気中でもその机能を损なうことがなく、実用的なスピントロニクス材料としての可能性を示しました。
近年、スピントロニクス技术への応用を期待して、固体表面のスピン偏极した电子状态について盛んに研究が行われています。スピン偏极した电子状态は大気中では酸素などとの反応によって简単に壊れ、その机能が失われてしまいます。従って、これまで报告されている表面材料は机能を损なうような反応がおこらない真空中(注3)で取り扱うことを前提としていました。スピントロニクス材料として実用化するためには、性能を保持したまま大気中に取り出し、安定に动作することが必要であり、最大の课题となっていました。
本研究では、グラフェンでカバーされた厂苍単原子膜に大気中でも大きくスピン偏极した电子状态があることを発见しました。また、电子のエネルギーに依存して原子膜面内方向に寝たスピンをもつ电子と面直方向に起立したスピンをもつ电子が共存していることも初めて解明しました。これらを选択的に利用すれば叁次元的な电子スピン制御が可能になります。
本成果は、グラフェンを保护膜として利用することで、これまで真空中でしか取り扱えなかったスピン偏极电子材料を大気中でも机能が保持されることを示し、実用的なスピントロニクス材料の开発を大きく前进させる成果といえます。
本成果は、2019年3月25日(米国東部時間)に米国科学誌「Physical Review Letters」でオンライン公開されました。

(図1)グラフェンでカバーされたシリコンカーバイド(厂颈颁)基板上のスズ(厂苍)単原子膜の侧面図(左)と上面図(右)。上面図ではグラフェン层を省略している。厂苍原子は厂颈颁基板上で叁角格子(上面図中の点线)を形成している。

(図2)厂苍単原子膜の电子のエネルギーバンド构造。结合エネルギー1.5别痴付近には面に垂直なスピンをもつ电子、茶色(左上)の点线内の结合エネルギー0词0.5别痴付近には面内を向いたスピンをもつ电子がいる。

论文情报

,PHYSICAL REVIEW LETTERS,

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