Research Results 研究成果
九州大学大学院医学研究院の吉良润一教授、山﨑亮准教授、山口浩雄共同研究员、大学院医学府博士课程4年の赵奕楠、博士课程1年の永田諭らの研究グループは、二次进行形多発性硬化症の新たな病态メカニズムとして、脳?脊髄のグリア细胞同士をつなぐギャップ结合蛋白がグリア炎症を制御しており、これらの机能异常が多発性硬化症の进行に大きく関わっていることを発见しました。
多発性硬化症は、国指定の难病で、原因は解明されておらず根治疗法はありません。近年、増加が着しく、我が国で约2万5千人、世界では250万人以上の患者さんがいます。自己免疫机序により脳や脊髄、视神経といった中枢神経の神経突起を絶縁するビニールのように取り巻いている髄鞘が繰り返し障害され、感覚低下や运动麻痺、视力障害、言语障害、歩行障害、排尿?排便障害などの様々な神経症状を引き起こします。この病気は1:3の割合で女性に多く、20歳代から30歳代の若年成人が侵されやすく、いったん発病すると终生罹患するため、大きな社会问题となっています。
多発性硬化症は、発症初期は症状が自然に良くなります(「再発寛解型」という。)が、発症10年后ごろから症状が治らなくなり、やがて再発していないのに症状が次第に进行する「二次进行型」に移行します。现在、再発寛解型の再発を减らす薬は保険诊疗で使用できますが、二次进行形に移行すると、そのメカニズムがよくわかっていないため有効な治疗薬が开発されていませんでした。
今回、研究グループは、多発硬化症のモデルマウスで中枢神経の髄鞘を产生するオリゴデンドログリアのギャップ结合蛋白コネキシン47を特异的に丧失させると、中枢神経のグリア细胞が异常に活性化して、末梢血から自己免疫细胞を呼び込み、髄鞘が破壊されることで、二次进行型と同様の症状と経过を示すことを世界で初めて発见しました。マウスでみられたグリア细胞の活性化やコネキシン蛋白の発现変动はこれまでも多発性硬化症患者さんの脳?脊髄の解剖で见られていましたが、これまでその原因や意义は不明でした。
この研究により、コネキシン蛋白の机能を修饰することで、これまでになかった二次进行形多発性硬化症の新规治疗薬が开発できる可能性が高くなりました。既に同研究グループではコネキシン机能を修饰するいくつかの薬剤の効果がこのマウスモデルを使ってみられています。
本研究成果は、2020年 1月13日(月)付で米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。
本研究は、础惭贰顿の课题番号闯笔19别办0109308丑0002の支援を受けました。
(参考図)二次进行型多発性硬化症の新たに発见された机序
中枢神経のグリア细胞(オリゴデンドログリア)のコネキシン蛋白の机能を阻害すると、アストログリアやミクログリアの炎症性活性化を介して末梢血からの白血球侵入を诱発し、さらに中枢神経の炎症が増幅される。
この结果をもとに、従来治疗法のなかった二次进行型多発性硬化症の新しい治疗薬が开発できつつあります。できるだけ早く多発性硬化症の患者さんの治疗に役立てたいと考えています。