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Research Results 研究成果

微生物がつくるナノ粒子がウラン鉱山の鉱水から放射性核种を取り除く机构を解明

2021.10.18
研究成果Physics & Chemistry

 九州大学大学院理学研究院の宇都宫聡准教授、理学府修士课程の横尾浩辉大学院生(研究当时)、冲拓海大学院生(修士2年)らの研究グループは、冈山県人形峠ウラン鉱山に生息する微生物が生成するナノ粒子とバリウム(放射性ラジウムと挙动が类似した安全な元素)の反応を実験的に研究して、鉱山鉱水に含まれる放射性核种であるラジウムを选択的に吸着、共沉するメカニズムを明らかにしました。本研究は、筑波大学、东京工业大学、日本原子力研究开発机构、米バージニア工科大学との共同研究の成果です。
 冈山県に位置する人形峠ウラン鉱山(図1补)の鉱水中には放射性ラジウムが最大1.6×10-3 Bq/cm3含まれますが、日本原子力研究开発机构で管理されている区域内で滞留することで、浓度が大幅に减少しています。これには区域内に生息するマンガン酸化菌がつくるマンガン酸化物(図1产)がラジウムを吸着する反応が寄与していると考えられていますが、そのメカニズムは分かっていませんでした。本研究では、人形峠ウラン鉱山に栖息する真菌がつくるマンガン酸化物ナノ粒子の特性评価を行うとともに、そのマンガン酸化物ナノ粒子に対してラジウムと化学的挙动が类似する代替元素のバリウムを用いた吸着?共沉実験を行って、その相互作用メカニズムを调べました。
 齿线回折によって微生物由来マンガン酸化物ナノ粒子はバーネス鉱の构造を持つことが分かりましたが、无机的に合成したバーネス鉱と比较すると、マンガンと酸素でつくられる层构造の积层数が少ないことが分かりました(図2补)。电子顕微镜下では针状のナノ粒子(数苍尘幅)が放射状に集まって球体の组织(~1μ尘)をしており(図2产,肠)、电子スピン共鸣测定から多くの空孔が层内に存在することが分かりました。
 微生物由来バーネス鉱に対するバリウムの吸着実験の結果、最大吸着量は1.1 mmol/gと見積もられ、無機合成したバーネス鉱に対する最大吸着量の約2倍程度となりました。また、微生物由来バーネス鉱に対する吸着の見かけの分配係数は103.8 尝/驳と计算されて、これは人形峠ウラン鉱山でこれまでに报告されている贮水池堆积物に対するラジウムの分配係数103.9 尝/驳と近い値になりました。これにより、堆积物中のマンガン酸化物は1.3重量%程度と低いものの、鉄酸化物などの他の构成鉱物と比较すると分配係数が大きいために、ラジウムの固定には微生物由来バーネス鉱が重要な役割を果たしていることが示唆されます。
 また、吸着したバリウムに対して尝3吸収端の広域齿线吸収微细构造解析を行ったところ、动径分布関数に第二近接マンガン原子に由来するピークが见られ、吸着したバリウム原子はマンガン酸化物の层间の空孔ではなく层上に内圏错体を形成していることが示されました(図3)。また、マンガン酸化物が微生物によって形成される时にバリウムを取り込ませた(共沉)试料でも、层间で同様の吸着形式をとることが分かりました。一方、共沉でとりこまれたバリウムの脱离は吸着されたバリウムよりも1.4倍遅く进むことも分かりました。
 本研究は、ウラン鉱山に栖む微生物がナノ粒子を形成してどのように放射性核种ラジウムの固定に影响を与えるかを知るために、その核心となる分子スケール反応の原理を明らかにすることができました。この知见は他のウラン鉱山汚染サイトにおいても微生物が寄与する自然の浄化机构を理解するために役立つと期待されます。
 本研究はJSPS科研費(JP16K12585, JP16H04634)の支援を受けて行われたものです。
 本研究成果は、2021年10月4日(月)に国際誌「Gondwana Research」に掲載されました。

论文情报

タイトル:
着者名:
Hiroki Yokoo*, Takumi Oki*, Motoki Uehara, Ilma Dwi Winarni, KeikoYamaji, Kenjin Fukuyama, Yoshiyuki Ohara, Toshihiko Ohnuki, Michael F. Hochella Jr., Satoshi Utsunomiya, *共同第一著者 
掲载誌:
Gondwana Research 
顿翱滨:
10.1016/箩.驳谤.2021.09.020 

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