About 九州大学について
本日学位記を授与された博士 440名、修士1,771名、そして専門職大学院学位記を授与されました 150名の皆さん、おめでとうございます。皆さんのこれまでの勉学や研究を指導し、また様々な面で支えてくださった先生方、研究室、事務職員、技術系職員の皆様、そして、ご家族の皆様に対しまして御礼とお祝いを申し上げます。
九州大学は、一昨年、2011年に九州帝国大学として创设以来、百周年を迎えました。この间に、皆さんを含めて、约26,600名の博士を、そして、约48,000名の修士と约1,400名の専门职大学院修了者を世の中に送り出してきました。
皆さんの大学院学生としての在学期間は様々で、また、今日の式典には、論文博士を授与された方もいらっしゃいますが、九州大学は、この十年の間に大きく進化してきました。平成15年(2003年)には芸術工科大学と統合し、平成16年(2004年)には法人化し、平成17年(2005年)には伊都キャンパスへの移転を開始し、平成21年(2009年)には六本松キャンパスを廃止し、すべての新入生の授業が伊都キャンパスで行われるようになりました。この年には、移転事業と平行して展開していた大学病院の再開発という大事業が完了しました。伊都新キャンパスへの移転は、国家や大学の厳しい財政状況にも拘らず比較的に順調に進み、現在整備中の基干教育院や椎木讲堂等に加えて、平成27年(2015年)の理学系移転、そして平成31年の完了へ向けて着実に進展しています。また、来年からは、入学式や学位記授与式等も、現在伊都キャンパスに建設中の椎木讲堂で行われることになります。ここ福岡国際センターで挙行される学位記授与式はこれが最後となる予定です。
学内はこのような状况にありますが、この数年间は、国际、外交、政治、経済等、社会全般にとっても、実に厳しい変化の多い期间でありました。百年に一度といわれる金融危机、アラブ诸国での政変や暴动、ギリシャや最近のキプロス等の财政危机に见られるような贰鲍における金融危机、洪水や寒波、地震等の自然灾害、近隣诸国との関係、我が国における二度にわたる政権交代等、枚挙に遑がありません。
中でも、一昨年の东日本大震灾は千年に一度という悲惨な大灾害でした。一万九千人近い犠牲者と行方不明者、未だに避难生活を余仪なくされている叁十万人を超える方々へ、改めて衷心から哀悼の意とお见舞いを申し上げずにはいられません。この大震灾から、私たちは、现在の科学技术のレベルに慢心することなく、いうならば「想定外さえも想定しておく」ことや日顷の研究や评论活动を一段高いところからモニターしておく、あるいは、メタな立场から常に観察し、考察しておくことの必要性等、多くの教训を得ました。
一方、科学技术に関しては、はやぶさの帰还に感动し、铃木先生、根岸先生、そして昨年の山中先生のノーベル赏受赏、スーパーコンピュータ「京」の成功等を通じて、过去から现在に至る脉々として受け継がれている真挚で诚実な科学者の姿势、日本の学术に対する取り组みの健全さを感じさせられました。また、日本における财政状况にも久方ぶりに明るい兆しを感じられるようになってきました。
このような国内外の情势、学内の情势の中で、皆さんは、この数年间、素晴らしい先生方の指导を受け、基础的な、あるいは最先端の研究に取り组み、确かな方向を掴み、立派な研究成果を得る等、大きな达成感をもって本日の学位记授与式を迎えられたことと思います。
九州大学は、昨年五月に一年延期していました百周年记念式典等を実施しました。この九大百年に际して、新たな百年に向けて「自律的に改革を続け、教育の质を国际的に保証するとともに常に未来の课题に挑戦する活力に満ちた最高水準の研究教育拠点となる」という基本理念を掲げ、九つ目指す姿とその実现のための行动计画を宣言しています。この九つの目指す姿とは、
一、 社会の課題に応える大学
二、 最高水準の研究を推進する大学
三、 アクティブ?ラーナーを育成する大学
四、 骨太のリーダーを養成する大学
五、 先端医療により地域と国際社会に貢献する大学
六、 卓越した研究教育環境を構築?維持する大学
七、 グローバル社会と地域社会を牽引する大学
八、 自律的改革により進化し続ける大学
九、 知の蓄積と継承?発信を推進する大学
の九つです。そして、「九大百年、跃进百大」、すなわち、すべての分野において世界のトップ百大学に跃进することをキーフレーズとして掲げています。これらは、役员や教职员の侧から教育?研究?诊疗活动に関する决意を示したものになっていますが、これから博士课程に进学し、あるいは公司や研究机関等に就职する皆さんの活跃と支援、协力なくしては达成できるものではありません。
また、六番目は九州大学の法人としての目指すべきものですが、それ以外は、これからの皆さんの「目指す姿」にもなっていると思います。このような目标を掲げて、これから皆さんが指导的な立场で国际社会を牵引し、困难な课题に対して果敢に挑戦されることを期待します。
最近、博士号取得者について、就职や気质等について様々なネガティブな论评がなされています。先生方も含めて皆さんはよくご存知のことですが、特に、博士课程は、国の大学院设置基準や九州大学の学位规则では、「専攻分野について、研究者として自立して研究活动を行い、又はその他の高度に専门的な业务に従事するために必要な高度の研究能力及びその基础となる豊かな学识を养う」ことを目的としています。これに従って审査され、めでたく本日の学位记が授与されたのであります。
したがって、大学等における「研究者」としてだけでなく、様々な业务で、いわば「総合职としての博士」としての见识と対応も期待されます。そのことを常に意识して活动して欲しいと思います。同じことを、これから博士后期课程に进学される皆さんにもお愿いしておきたいと思います。
博士论文の成果がそのまま公司等ですぐに役に立つことは稀ですし、皆さんへの期待は、また、皆さんが真価を発挥できるのは、一定の期间、一つの课题に集中して取组み、深く掘り下げ、それを解决して、立派な论文としてまとめ上げた、という「経験」にあると思います。そのような経験を活かすためには、深く掘り下げた分だけ、高みに登り周囲を俯瞰する习惯を身につけることが重要です。そして、事态を総合的に见极めて、新しい有効な解决の方向を提言し、社会を先导しようと心がけていただきたい。
そのための手法としてよく使われるのが、演绎(ディダクション)、帰纳(インダクション)、アブダクション、あるいは、歴史に学ぶことも含めた类推(アナロジー)です。最近では、ビッグデータの活用も注目されています。このうちインダクションとアブダクションは、観测等で得られたデータや事実の集合から仮説を形成するときに役立つ推论ですが、これらには、いわばアクティブ?ラーナーのような侧面があります。絶えず学び続け、データや事実との整合性のチェックが欠かせません。そして、时には勇気をもって、それまでに得られた仮説や仮説を生み出す空间そのものさえも弃却しなければならないことさえあることを忘れてはなりません。
スーパーコンピュータ「京」に代表される计算机によるシミュレーションは、「计算科学」と呼ばれ、「理论科学」と「実験科学」に続く第叁の科学技术の方法论として注目されてきました。最近では、各种のセンサーデータ、メディアデータ、カスタマーデータ、メディカルデータ等の巨大なデータが日常的に、社会のあらゆる场面で集积しています。そのため、その有効活用が、ビッグデータというバズワードのもとで、急速に、特にビジネスの世界で注目されるようになり、统计的推测やデータマイニング、机械学习等を駆使した「データセントリック科学(データ中心科学)」という第四の科学とも呼ばれる方法论が浮上しています。しかし、科学技术に関係した分野では、地震等灾害データや気象データ、各种の実験?観测?计测によって得られた超巨大ともいえるデータが蓄积し、ゼタ、すなわち、10の21乗を遥かに超える量になるともいわれています。そこでは、これまでの科学的方法论と全く违った、新たなデータの见方や现象の理解の仕方、すなわち、新しい哲学さえもが必要になってきます。
このような新しい时代の到来を予感して、确かな推论や分析に基づき、时として俯瞰力と统合力を発挥して、难问を解决に导き、本日出席している多くの外国人留学生とも共同して国际社会で大きく贡献されることを期待します。
九州大学の外国人留学生は、二千人を超えており、留学生の多くは大学院で学んでいます。秋季入学の留学生も増えています。昨年十月には、本学としては初めての秋季入学式を挙行しました。九州大学は、グローバル30や世界展开力强化事业、キャンパスアジア、リーディング大学院等、数多くの国际事业を推进しています。留学生の皆さん、修了后も共同研究や共同教育プログラム、あるいは同窓会活动等を通じて、九州大学との関係を强固なものとして维持し、発展させてくださるよう期待します。
本日学位记を授与された皆さんの今后のご活跃と成功を愿いまして、告辞といたします。
平成25年3月26日
九州大学総长
有川节夫