About 九州大学について
新年おめでとうございます。
昨年は、自民党や政府、文部科学大臣、中央教育審議会等から、大学、特に国立大学に機能強化や目に見えるスピード感のある改革を求める提言や要請が、相次いでしかも具体的な形でなされた1年でした。例えば、5月の自民党?日本経済再生本部からの大学のガバナンス改革等を含んだ「中間提言」、教育再生実行会議からの「これからの大学教育等の在り方について(第三次提言)」、6月の閣議決定による日本再興戦略の中の「日本産業再興プラン」における大学改革の位置付け、また、6月には、こうした提言等を受けて、文部科学大臣による国立大学長への「今後の国立大学の機能強化に向けての考え方」の提示、11月の同じく文部科学大臣による「国立大学改革プラン」、12月の中教審大学分科会組織運営部会の「大学のガバナンス改革」に関する審議のまとめ等であります。一方、文部科学省と各大学との協議により、ミッションの再定义の作業が進行中で、既に医学、工学、理学、農学等についてまとめられ、現在、その他の分野についても作業が進められています。
こういった状况にあって、本学では、高度な教育?研究?诊疗活动を展开するために独自の制度改革を実行し、竞争的な外部资金の获得等、多くの面で目に见える成果を上げてきました。そのうち主なものを取り上げて、昨年の実绩を振り返り、今年を展望してみます。
先ずは、「主干教授制度」です。これは、自由な発想に基づく研究で际立った成果を上げ、それぞれの研究者コミュニティで高く评価された教授に主干教授の称号を授与し、给与面で优遇し、研究センターを设置して研究をさらに活性化しようとするもので、こうした研究センターは既に21拠点に及びます。その多くが、有能な外国人研究者の招聘や新たな研究资金の获得等、活発な研究活动を展开しています。この制度は、大学の自主的?自律的な机能强化を促す制度であり、新しい形の研究组织构成手法としても各方面から注目され始めています。
次に、「大学改革活性化制度」です。昨年で3年目を迎え、社会や学界からの要请に、実绩のある研究组织が迅速にそれを强化し応えるための効果的な制度として定着してきました。これは、自律的?自主的にそれぞれの教育研究组织を强化?再构筑するもので、审査には公平性と透明性が确保され、実绩を积み计画を精錬して何度でもトライでき、一方で、頼母子讲的な、あるいは互譲互助的な侧面を兼ね备えた改革のためのスキームです。これも既に、国立大学法人评価委员会において「中期计画の达成に向けて特笔すべき进捗状况にある」として高く评価されています。
三つ目は、「基幹教育」です。アクティブ?ラーナーの育成を目指す「基幹教育」が、いよいよ今年4月から始まります。今年は、本学にとって、まさに「基幹教育元年」です。九州大学が百周年を迎えた平成23年に本格的な教員組織である基干教育院を設置し、これを中核にして全学が参加して、人事やカリキュラム等、2年以上かけて周到に準備をしてきました。基幹教育においては、学生達は、授業?学習に積極的に取り組み、学び方を学び、考え方を学び、学びの背骨を鍛え、学びの姿勢を身に付けることになります。
法人化後、研究だけでなく、教育や診療等に要する殆どすべての経費や資金に、厳しい審査による競争原理が導入されています。本学では、昨年3月に「地域資源等を活用した産学連携による国際科学イノベーション拠点整備事業」に「多様性の持続的発展を支える共進化社会システム研究開発拠点」が採択され、建物の整備が進んでいます。また、10月には、これをハードとすれば、そのソフトあるいはコンテンツにあたる「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」に「共進化社会システム創成拠点:ヒト/モノ?エネルギー?情報のモビリティによる多様で持続的な社会の構築」が採択されました。産学官と地域が連携した極めて斬新なイノベーション創出活動の展開が始まります。
また、アジアではじめて开设された「マス?フォア?インダストリ研究所」が4月に文科省より、共同利用?共同研究拠点に认定されました。これは、数学の分野では、50年前に京都大学に设置された数理解析研究所に次いで2つ目ということになります。 さらに、8月には、「研究大学强化促进事业」が採択されました。これによって、既にいくつもの计画で顕着な成果をあげている鲍搁础活动が安定し本格的に机能することになります。
10月には、一昨年の工学、総合理工学分野に続いて、博士课程リーディングプログラム(オールラウンド型)に「持続可能な社会を拓く决断科学大学院プログラム」が採択されました。オールラウンド型ですので、すべての大学院学生に参加の机会があります。矢原教授のリーダーシップのもとで、国内外の现场での活动等を通じて、高度な専门性に里打ちされた决断力を持ったグローバル?リーダーとしての修养を积むことができます。学习研究活动に必要な経済的支援も用意されています。こうしたリーディングプログラムに関しては、本学独自のよりコンパクトで柔软性のあるプログラムを3本用意して、医学、数理学、地球社会统合科学の分野でもグローバル?リーダー育成に取りかかります。
大学院教育に関しては、12月に閣議決定されたように比较社会文化学府を再編した「地球社会統合科学府」計画が高い評価を得て認可され、国と大学から新たに教授?准教授5名のポストを獲得して、今年4月からスタートします。この学府は、20年にわたる比较社会文化学府における学際的な研究教育が評価されて実現するもので、「惑星としての地球、地球をふるさととする生物、そして地球の上で生きる人々の社会を学際的に、また統合的に分析し、来し方を明らかにし、現代社会の課題に応え、未来社会の構築に貢献する」ことをめざすもので、文理の枠を超えた専門性と俯瞰力を身に付けた逞しいグローバル?リーダーの育成が期待されています。
主干教授制度や大学改革活性化制度よる研究センターの他に、いくつかの际立った研究成果?実绩に基づく新しい研究センター等もスタートしています。4月には、「有机光エレクトロニクス実用化开発センター」が开所しました。これは、福冈県のものですが、本学の最先端研究开発支援プログラム(贵滨搁厂罢)における安达教授の卓越した研究成果を生かした产学官连携による実用化研究を行い、产业界への技术の桥渡し拠点を目指すもので、本学にとっても重要な意味を持つものです。6月には、佐々木教授が先导する「次世代燃料电池产学连携研究センター」が开所しました。経产省の支援も得て整备したもので、国际的な产学连携研究の拠点としての贡献が期待されています。11月には、都甲教授の独创的な研究を飞跃的に进めるための「味覚?嗅覚センサ研究开発センター」が设置され、1月に开所式が行われます。また、病院の「础搁翱次世代医疗センター」も中西教授のリーダーシップのもとで组织立った活発な活动を始めました。さらに、井上教授等の卓越した研究活动が结実し、「システム创薬リサーチセンター」の施设も国からの今年度の予算措置を得て整备されることになり、创薬分野の研究が加速されることが期待されています。
9月には、百道にサテライトキャンパスとして、「产学官连携イノベーションプラザ」を开所しました。これは、建物を闯厂罢から、土地を福冈市から无偿で贷して顶き开设したもので、ここに、知的财产本部を再编?拡充改组した「产学官连携本部」が入居し、本学における产学官连携活动の支援活动を展开しています。このキャンパスは、伊都キャンパスと他のキャンパスの中间に位置するため、医工连携等、异分野との连携融合の空间として机能することも期待されています。
1月にカーボンニュートラル?エネルギー国際研究所(I2CNER)研究棟の竣工式典を挙行しました。椎木正和氏からの寄付による椎木讲堂の建設は順調に進み、今年3月4日に落成式を行い、3月25日の平成25年度学位記授与式をはじめとして、全学的な大きな行事をここで開催できることになります。また、4月には、大学の法人本部もここに移転します。こうして移転事業がいよいよ完成に向けて加速することになります。さらに2月には基干教育院棟が完成し、基幹教育の中核を担う教員が集結することになります。同時に、センターゾーンとイーストゾーンを結ぶ架橋も完成し、伊都キャンパスの東西が一体化します。
東日本大震災の影響を受けて延期されていた理学系の建物は、昨年10月に着工し、平成27年央には移転できる見通しになりました。また、平成24年度補正予算で整備が進行中の国際村、ドミトリーⅢ、I2CNERの第2研究棟、共進化社会システムイノベーションセンター等も平成26年(度)には完成します。こうして、既に全体の約50%に当たる25万㎡の整備が完了し、現在整備中の11万㎡と合わせると約70%に達します。なお、平成25年度補正予算で、イーストゾーンに国際化拠点図书馆(中央図书馆の一部)も整備される見込みです。
このように九州大学では、自主的?自律的に教育?研究?診療、産学官連携、社会连携、国際活動、キャンパス整備事業等にわたる様々な課題に取り組み、単なる改革でなく難度の高い改革スキームを導入してきました。しかし、冒頭で紹介したように政府や経済界等からは、より迅速に、目に見える改革、機能強化が求められています。そうした要請や提言には、当然のことながら一貫性が見られ、特に国立大学に関しては、11月26日に発表された下村文部科学大臣からの「国立大学改革プラン」(以下、「改革プラン」という。)、あるいは、12月の国立大学学長との意見交換会での大臣の挨拶に集約されています。
改革プランでは、先ずその位置付けを行い、第二期中期目標期間を「法人化の長所を活かした改革を本格化する期間」とし、平成27年度までの残された第二期中期目標期間を「改革加速期間」と位置付け、前政権の終盤から始まっていた大学のミッションの再定义やこの改革プランを駆動させて、第三期中期目標期間では、「各大学の強み?特色を最大限に生かし、自ら改善?発展する仕組みを構築することにより持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学を目指すべきである」としています。さらに、こうした機能強化の方向性を示し、それを実現するために、各大学に「自主的?自律的」改善?発展を促し、その方策として
などを具体的な数値目标とともに掲げています。
现政権では、大学に大きな期待を寄せ、折に触れて、「大学力は国力そのものであり、大学が変わらなければ、大学だけでなく、日本も地盘沉下する」という危机感を表明しています。こうした危机感は、大学に対する期待感の表れとも取れますが、大学に政府からここまで具体的な要望等が出されるのは异例なことです。里返して考えれば、大学は、これまで、社会の期待にあまり応えてこなかった、少なくともそういう风に见られてしまったということになるでしょう。
この改革プランでは、第二期中期目标期间の助走期间分については、既に平成26年度の概算要求に盛り込まれ、しかも、本学の取组みについては事例として取り上げられています。こういう状况を、真挚に受け止めて、早急に具体的な改革案を示し、取り组みを开始し加速する必要があります。このことが、法人としての九州大学にとっての今年最大の课题と言っていいでしょう。
ここで、注意すべきことは、改革プランでも「自主的?自律的」という言叶が使われていますが、これは、运営费交付金の配分や中期目标?计画の见直しも伴う极めて実质的な意味を持たせた言叶であり、これまで我々大学人が「学问の自由」や「自由な発想に基づく研究」といった文脉で使ってきた言叶とは、意味合いが大きく违うということです。このことは、大学のガバナンス改革に関しても同様に考えるべきでしょう。実际、中教审组织运営部会での审议のまとめでも、その冒头で、「大学改革は、大学が学长のリーダーシップの下で、自主的?自律的に行うべきもの」としています。
しかしながら、幸いなことに、九州大学では、法人化以前から、そして、法人化后も相当なスピード感をもって、难度の高いシステム改革を大学构成员の理解を得て、自主的?自律的にいくつも実行してきました。また、改革プランでも强く求められている国际化についても、本学は、国际教养学部(仮称)の构想を全学で共有し、几つかの部局でそれを意识した準备が自主的に进められています。また、専门性と総合性、国际感覚と俯瞰力を备えた学生の育成についても前世纪末に导入した「21世纪プログラム」において、学生の选抜も含めて际立った実绩を上げてきました。骋30における工学部や农学部を中心にした経験と実绩があり、大学院についてはすべての学府が既に対応しています。さらに、法学部?法学府における国际人育成のための英语による学部?修士课程(尝尝.惭)一贯教育もあります。 そして、今年は、「基干教育」がスタートします。
このような準备や実绩を基にして、グローバル社会に対応できる斩新な教育システム「国际教养学部(仮称)」を具体化する机は熟してきました。これは、改革プランにおける上记(2)の教育と留学生支援に応えるもので、研究については、主干教授制度や大学改革活性化制度、奥笔滨の滨2颁狈贰搁の理念の実现、ユニットごとの海外有力大学との连携、さらには、平成26年度概算要求に际して表明した「跃进百大実行计画」を具体化することによって実现できるでしょう。具体的には、「世界のトップ100位に10大学」という目标が掲げられていますが、これは、まさに我々が九大百年に际して宣言した「跃进百大」と轨を一にするものであります。
改革プランの中の上记(1)は、百周年に际して宣言した「目指す姿」の第一项目に掲げた「社会の课题に応える大学」そのものであり、大学改革活性化制度等は、これを先取りした形になっています。(3)については、产学官连携本部や鲍搁础といった支援部队の整备に加えて、内阁府や各省庁の大型プロジェクトへの取り组みとその自治体や公司等への波及?展开、博士课程リーディングプログラム等、既に具体的な対応が始まっています。
(4)の人事?给与システムの弾力化については、本学のような研究大学には、教員の20%程度を年俸制度に切り替えるという極めて高い数値目標が設定されています。年俸制についての基本的な考え方、具体的な給与体系、その財源等について、早急に検討し、具体案をまとめる必要があります。(5)の大学のガバナンス改革については、昨年末にまとめられた中教審大学分科会組織運営部会の審議を踏まえて、必要な制度改正や支援を実施するとされていますが、先に述べたように、ここでも各大学は国立大学法人法等の趣旨に沿った「自主的?自律的」な改革が求められています。重要な事項は、学長のリーダーシップの確立、学長選考会議による学長選考の実質化、教授会の役割の明確化、監事の役割の強化等です。このガバナンス改革については、我々がかねてから主張している自主性?自律性?権限とそこから必然的に生じる責任について、どう折り合いをつけるのか。大学人の真価が問われることになると思います。
以上述べてきたように、大学に対する社会からの要请や期待は、内容にも时间的にも厳しいものがあります。基干総合大学として、また、そこで働く职员として、自覚と夸りをもって、これらに的确かつ迅速に応えて行かねばなりません。「基干教育元年」の今年、新入生の教育から始めて学部専攻教育や学府教育、高度な研究、诊疗等すべての面で、皆さんの创意と工夫、理解と协力、积极性と実行力でもって、直面している数々の难题を解决し、新しい道を开いて、前进していきましょう。
今年が、九州大学のすべての构成员にとって、新しい时代への跃进に向けた素晴らしい一年であることを祈念して、新年の挨拶とします。
平成26年1月1日
九州大学総长 有川 节夫