About 九州大学について
本日ここに大学院学位记授与式を挙行するに当たり、めでたくこの日を迎えられた1,654名の修士学位记と416名の博士学位记、そして62名の専门职大学院学位记を受けられる皆さん、おめでとうございます。皆さんの永年の研钻努力に深い敬意を表し、心からお庆び申し上げます。
また、北京大学 许 智宏(シュィ?ジーホン)学长におかれましては、大学院学位记授与式にご出席いただき、祝辞を顶戴できますことを、九州大学を代表致しまして厚く御礼申し上げます。
皆さんが九州大学大学院の各学府で高度に専门的な教育?研究の指导を受けて大学院修士课程あるいは博士课程修了という辉かしい地点に到达することができましたのは、皆さん自身の不断の努力の赐であることは勿论ですが、経済面から精神面まで支えていただいたご家族の支援、人间的、社会的に独立できるように大学で教育?研究の指导をしていただいた教职员の励まし、研究室、ゼミでの先辈、友人の支えも、皆さんの大学院修了という目标达成に不可欠の要因であったことは疑いもありません。
皆さんは大学の学部卒业后、九州大学の大学院という最高の教育?研究环境下で、高度の専门分野で将来の日本の指导者となるための训练を受けてこられました。ただ、皆さんの受けられた大学院での教育?研究は、社会に出て直面する种々の问题に自ら进んで挑戦し、自分自身で考え、その解决の糸口とプロセスを见出すことのできる能力を身に付けるためのものであったと思います。社会に出て就职したときに、大学の仅か数年间で学んだ自分の専门分野以外には兴味がないという、视野狭窄的な人间を育てる教育を、九州大学で行った积りはありません。真の科学の研究?技术は计り知れないほど高度で深く、皆さんの现在の能力や専门性は、その入口にあるにすぎないといった状态です。ただ、皆さんが受けられた九州大学大学院での教育?研究は、自分で问题を见付け、自分で解决するという「问题提起型の创造性开発教育?研究」であり、その训练を受けた皆さんは、日本、世界に於いて人文?社会?自然科学を先导する研究者あるいは指导者となるべき人材として强く期待されているのです。
最近の科学の进歩、とりわけ、バイオテクノロジー、通信情报、ナノテクノロジー?材料や环境分野などの科学と技术の进歩は目覚ましいものがあります。そのため、私达人间が、科学?技术を理解できなかったり応用技术に追いつけないことがしばしばあり、この様な现状が、科学?技术に支配される人间が生まれ、人间としての心と爱情を正常に持ち得ない人间が増してくる现象の一因となっています。また、科学が人间の伦理を越えてしまった事例も多くあります。
科学の进歩には、ともすると人间を物质として捉えるか、あるいは物质主义の心を持つ人间をはびこらせる危険性が伴っていますので、私达は、科学?技术の进歩が、社会?人间の伦理や环境を守るための制约を越えないよう监视する目を养うと共に、自然との共存に対するバランス感覚を身に付けなければなりません。その意味でも自然科学だけでなく人文?社会科学との融合研究から生まれる成果が社会的に重要视されているのです。今、九州大学大学院で学んだ皆さんに求められるものは、多くの発明?発见が人类を含めた地球上の全生物にとって真の幸福をもたらすものかどうか、常に検証し、正しい结论を导き出す素养と见识の涵养です。
このように科学?技术の进展の目覚ましい世界で、皆さんが九州大学大学院で受けた教育と研究成果をどの様に生かさなくてはならないのでしょうか。よく世界では「地球の爱」と「人の爱」と対比させて语ることがあります。「地球の爱」や「人の爱」という表现は、非常に曖昧で観念的でしかありませんが、地球上に多くの人间がどの様な状况で生活しているかを考えるとある程度、その意味が理解できます。地球上の多くの人々の生活环境は、地势?地形、気候などの风土や土地の豊かさ、水资源の豊富さ等様々な要因によって异なります。即ち地球がもたらす豊かさと贫しさ、温和さと苛酷さ、あるいは住み易さ?住みにく难さなど、様々です。また、地球规模の地理や気候条件が同じでも、政治的、経済的、文化的、宗教的要因によって、私达の生活の状况は着しく异なってきます。さらに自然灾害、感染症などの病気あるいは食粮の生产量等考えると、人々が地球上で幸せに豊かに生活をするという人间として等しい同じ権利を持っているにもかかわらず、地球上での生活状态は国、民族、地域によってあまりにも异なっていて不平等です。その意味では、「地球の爱」とは、不平等で様々な苛酷な条件で生活をすることを各々の地域の人间に强いていることであります。「地球の爱」の不平等を平等にできるのが、「人の爱」であり、科学?技术の活用の重要さがそこにあるのです。
3月20日、福冈を突然袭った福冈県西方冲地震は、予想を超えた被害をもたらし、依然余震が続き、多くの方々が避难生活を余仪なくされています。最近の主な自然灾害?疫病を挙げても、2004年10月の新潟中越地震、12月のインドネシア?スマトラ岛冲で起こったマグニチュード9.0の地震とそれにより発生した津波被害による约16万人の死亡や、2003年12月のイラン南东部地震による25,000人以上の死亡があります。また、新型肺炎厂础搁厂の猛威、地球规模での础滨顿厂の広がりや狂牛病叠厂贰などの新感染症は、私达の幸福な生活を胁かすだけでなく、人类の生存さえ危うくしています。さらに、ここ数年、アフリカに於ける内戦による国の荒廃、食粮不足、极贫、疫病の蔓延等人间としての尊厳と生存をゆるがしかねない问题が起きています。个々の人间には全く责任のない个人の努力では如何ともし难い、これらの不平等な问题を解决し、人间的に平等で人间として豊かな生活を実现できるのが、科学?技术の适切な活用であると私は信じています。
地球上の谁もが人间としての幸を等しく享受し、豊かな心を持って生活することを可能にするのが科学?技术の活用とそのさらなる进展?発展であり、地球上での等しい幸福な生活の実现が「人の爱」なのです。
平成18年から始まる第3次科学技术基本计画には、安心?安全で质の高い生活ができる国を実现するとありますが、地球上の全ての国でこのことが可能になるよう、日本を含めた先进国が义务として努力しなくてはなりません。国の安全?安心の确保は国の持続的発展を维持する上でもっとも基本的要因であり、テロやネットワーク攻撃のきょうい胁威、インフラの脆弱さを含む灾害への対応、アジア诸国の急速な成长や世界全体の人口増加に伴う食料需给の変化などに备えておくことが求められています。日本の最高学府の一つである九州大学大学院で教育を受けた皆さんがその役目を担っており、大学院教育の目的の一つが地球上での「人の爱」の実现です。そのための努力と「人の爱」の実现こそ、九州大学教育宪章の人间性?社会性?国际性?専门性の具现化であるのです。确かに科学?技术の进展?発展とその活用は、国、地域、公司の利益をもたらすためにも重要ですが、私达が科学?技术の発展のため、目覚ましい成果を挙げる努力をする最终目标?目的は「人の爱」の実现であることを、また、それが地球上に住む私达に等しく与えられた责务であることを、九州大学大学院で教育を受けた皆さんに自覚して欲しいのです。
「人の爱」の実现を目指して皆さんは九州大学大学院で何を学んだのでしょうか。科学?技术の発展?进展は、皆さんの独创性?创造性なくしては不可能です。独创性?创造性は各个人の学术的?芸术的个性の集积から生み出されるものであり、それを皆さんは九州大学大学院での学生生活の中で个々に身に付けてこられたものと信じています。今后とも、常にあらゆる事柄に、あらゆる场面で自ら问题を提起し、自分自身で解决する能力を磨いて下さい。
皆さんは、将来の日本の指导者として期待され、最高学府の优れた教育?研究环境で高度な専门分野を身に付ける训练を受けてきました。今后、皆さんに求められるものは、皆さんが生み出す科学技术が人类を含めた全生物にとって真の幸福をもたらすものかどうか常に反芻を怠らない姿势と伦理観です。
九州帝国大学は、1911年に京都帝国大学福冈医科大学と工科大学を统合して、设置されました。1921年9月1日付で第1号の医学博士号を授与して以来、九州大学は世界で活跃する数多くの大学院修了者を世に送り出してきました。昨年4月に国立大学は法人化され、九州大学は国立大学法人九州大学に名称が変わりました。九州大学でも、法人化の基本理念を具体化することにより、世界レベルの教育研究の中核的拠点を构筑することが求められています。九州大学の活动の重点四分野(教育、研究、社会贡献、国际贡献)で他大学と比较して特徴のある活动と顕着な成果を出し、大学の活动、成果のピークを社会に対して分り易く目に见える形で情报発信することが、教育研究の世界的拠点大学として九州大学が生き残るための唯一の道です。
最后に、(博士)学位记の由来についてお话しいたします。学位记の用纸は、财务省印刷局で印刷されております。デザインは、大正から昭和20年にかけて発行された纸币の図案を数多く手がけられた、磯部 忠一(いそべ ただかず)氏の考案によるものです。轮郭は正仓院御物の古代纹様が描かれ、唐草纹様は东大寺叁月堂の本尊であります不空羂策(ふくうけんじゃく)観音像の宝冠などに表现された宝相华(ほうそうげ)唐草纹様に酷似しております。日本美术の黄金期といわれた8世纪、天平时代の美术作品から採用し、描き起こしたものと考えられます。この学位记は极めて格调の高い独创的な図案であり、九州大学に相応しいものであると思っております。
今后、皆さんがさらなる研钻を続けられ、诸先辈方の筑かれた九州大学大学院の伝统を引き継ぐとともに、新しい时代の、新しい日本を担う中核的あるいは指导的な存在としてご活跃されるよう期待して、私の挨拶と致します。
平成17年3月25日
九州大学総长
梶山 千里